ちょっとちょっと小説・コーヒー

 2年ほど前、朝のコーヒーを飲もうとカップを見ると、小さな男が短パン姿で泳いでいた。

「あなたが淹れるコーヒーは、泳ぐのにとてもいい温度で、香りもいいんです。」

と、背泳ぎをしながらにこやかに話しかけてきた。

コーヒーカップのフチからフチまで、行ったり来たり。クロール、平泳、バタフライなど、様々な泳法を見せてくれた。

「今から潜るので、時間を測ってもらえますか?」

と、立ち泳ぎをしながらワタシに話しかけてきたので、無言で頷き腕時計を準備した。

「では!」

と一言残して、小さな男はコーヒーの中に消えていった。


・・・ずいぶん時間が経つが、未だに男は浮かび上がってこない。

ワタシは日課のコーヒーが、いまだに飲めずにいる。




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